豆知識


宝石とは 宝石の成因 物理的性質
結晶の形 光学的性質 天然のインクルージョン
ファセット 研磨・彫刻・彫り込み 合成宝石
イミテーションと
エンハンスメント
誕生石 鉱物一覧表

摩訶不思議な魅力、類稀な色、ただよう光の揺らめきだけが、宝石を多くの人にとって貴重な存在としているわけではありません。宝石の持つ希少性、硬度、耐久性、その美しい自然美も加味されて、宝石の価値は倍増されるのです。

時代を超えて、宝石は富と権力の象徴とみなされてきました。最高位のシンボルとして、王冠や華麗なローブなどは昔から宝石で飾りたてられました。しかし、宝石は富める人達や科学者ばかりでなく、アマチュアの宝石鑑定家や宝石の美しさや歴史に心ひかれる愛好者の間でも親しまれています。

地球上には3000種以上の鉱物が存在し、そのうち宝石として普及されているのは約50種ほどです。そのほかにも、珍品の収集家の為にカットされている石もありますが、軟らかすぎて傷がつきやすいなど、大抵は宝飾品には適しません。しかし現実には、宝石としてして認識される鉱物種の数は、ファッションの移り変わりや、新しい石の登場につれて常に変わっていきます。

宝石として認められる為には鉱物(まれに有機物)が、美しくなければなりません。特に色が大切です。また、日常の使用に耐え、摩耗や傷などの耐久性を持つことも必要です。もちろん希少性も必項です。産出量が少ない為、市場で高い価値を持つのです。
しかし、たとえ宝石としての価値が低い石でも、心をひきつける石を集めることができます。海岸で琥珀(こはく)や翡翠(ひすい)などの小さなかけらを拾ったり、地元のオークションで美しい宝石に出会ったりする事もあるかもしれません。集めた石がどんなにささやかな物でも、魅惑や喜びのひとときをもたらしてくれるでしょう。
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宝石とは
宝石とは、一般的に、人を美しく飾る為に加工した鉱物の事を指す。美しく、珍しく、傷つきにくくなければなりません。
ほとんどが天然性の鉱物で、一定の化学組織を持つ無機質で、規則的な結晶構造から成ります。
琥珀(こはく)や真珠のような、植物や動物といった有機質を資源を持つ宝石もあります。
また、自然にではなく、人工的に作られる合成宝石もあります。これらは天然宝石とよく似た物性を持ち、カットしてイミテーションとして使われることがあります。

カット石
ここにあげたエメラルドのように、カット石のほとんどは、ある一定の結晶をして、マトリックスと呼ばれる母岩中に包含されています。この状態の石を原石といいます。天然の結晶は、そのままでも鑑賞に堪えうる物が多いが、カット、研磨する事によってさらに美しさを増し、宝飾品や装身具に使用されます。

天然の結晶
はっきりと区別できる結晶面で囲まれる。例えば柱上の結晶として天然で産出される事もあります。

研磨石
自然に川の流れなどによって丸くなる物や、人工的に研磨します。

カボッション
石のカットとしては単純な形のカボッションカットは、ドーム形で表面を丹念に研磨します。

ファセット石
宝石はたいてい、ファセットと呼ばれるたくさんの小さな面をつけてカットされる。ファセットが光を吸収、反射して魅力的な輝きをだします。

合成宝石
人工的に化学合成した石を指し、化学組成、光学的性質は天然石と同じとされています。フラックス法で成長した結晶をカット、研磨し、宝飾品や装身具に使用されます。

イミテーション
宝石には、昔から模造品(イミテーション)がつきものでした。鉛ガラスや人工の素材など、より安価なものが使われます。
緑のガラスに赤色のガーネットを張り合わせた組み合わせ石は複数の石で構成されます。
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宝石の成因
鉱物質の宝石は、岩石中、あるいはその岩石に由来する礫(小石)でできている漂砂鉱床中より産出します。岩石は1種類から数種類の鉱物の集合体で、3つの主なタイプに分類されています。3つのタイプとは、火成岩、堆積岩、変成岩で、岩石の輪廻という表現がふさわしい連続性があります。このような岩石中に存在する宝石質の鉱物は地球の表面にある為、採掘が容易になる事もあれば、地底深く掘削しなければ採掘できない事もあります。また、侵食作用で母岩から分離し、川の流れによって湖や海に運ばれたものもあります。

火成岩
火成岩は、地下深部に由来する溶けた岩石(マグマ)が固まってできたものです。火成岩の中には、火山からの噴出物である溶岩や火山弾、火山灰のように噴出してできる墳出岩があります。これに対して、地下で固まったものは、貫入岩と呼ばれます。基本的には、このような岩石の冷え方や固まり方がゆっくりしている程、結晶が大きくなるので、その中に宝石ができやすい。サイズの大きい宝石の結晶は、ペグマタイトと呼ばれる一種の貫入岩の中に産する事が多いと言われています。

変成岩
変成岩は、火成岩や堆積岩が地球内部で高熱や高圧を受けて新しい鉱物に変わる事(変成作用)でできた岩石の事をいいます。その過程で宝石質の鉱物が変成岩中に成長します。例えば、ガーネットは、かつて泥岩や粘土だったものが変成作用を受けてできる雲母片岩中で産します。石灰岩が高温と高圧を受けて大理石ができると、その中にルビーが含まれる事があります。

堆積岩
風化でできた岩石の破片が集積し、固まったのが堆積岩です。時間の経過とともに破片が沈殿し固まって、再び岩石になります。ふつう堆積岩は層状に重なるもので、装飾用として加工した石にその模様が現れます。オーストラリア産のオパールの大部分は堆積岩中に産します。トルコ石は主に堆積岩の頁岩などの中に脈状で産します。岩塩や石膏は、それ自体が堆積岩です。

有機質の宝石
これは植物や動物が起源となっています。天然真珠は、海水や淡水に生息する貝類の貝殻の中に入った異物(核)の回りにできます。日本や中国では、沿岸の浅瀬の養殖場で真珠が養殖されています。動物起源のものとしては、色々な貝類の殻や鼈甲(べっこう)があります。生息地は海中、淡水中、陸地と広くあります。珊瑚(さんご)は海中に生息する小動物である珊瑚ポリープの残存骨格です。骨または哺乳類の歯や牙である象牙は、現在の動物から取ります。琥珀(こはく)は、化石化した樹脂で、軟らかい堆積岩や海中から取れます。ジェットは堆積岩中に産する樹木の事です。
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物理的性質
宝石の物理的な性質、硬度、比重、劈開(へきかい)や断口は、石の中での原子間の化学結合力や結晶構造によって決まります。例えば、ダイアモンドは自然界でもっとも硬い物質あり、一方石墨はもっとも軟らかい物質ですが、両方ともお同じ炭素でできています。最高の硬さと永遠性が生まれるのは、ダイアモンドの中での炭素原子の結晶のしかたによっています。

硬度
硬度は、宝石の重要な性質の一つで、石がどのくらいの引っかき傷に耐えうるかで測ります。どの鉱物も、1〜10に分けたモース硬度計で分類する事ができます。モース硬度での数字は、硬度の順番を表わしているので、番号間の硬さは等均等ではありません。それがもっとも顕著に現われるのが9〜10の間です(ヌース硬度参照)。硬度の測定は石を傷つける破壊検査なので、宝石の場会は他に検査方法が無い場合において行われます。

ヌープ硬度
ダイアモンドの先端で結晶の表面に傷をつけた時の圧力で硬度を測定した表。10までの数字は硬度を表します。

モース高度計
モースの高度計はドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが、鉱物の相対的な硬さを分類するする為の一方法として考案されました。一般的な鉱物を10種類を選び、相互に引っ掻き傷をつけられるかどうかの順番を並べて、硬度の基準を設けました。すなわち、どの番号のものも、それより低い番号に属する物に対しては傷をつける事はできますが、それより高い番号に属する物からは逆に傷をつけられるという硬度の違いを基準を設けたという事です。

比重
宝石の比重とは、石の密度を示す値です。石の重さと、同体積の水の重さを比較して求めます。比重の数値が大きいほど同体積では重いという事を表します。例えば、黄鉄鉱(比重5.2)は、それより大きなほたる石(比重3.18)より重いと感じます。また、同じ大きさのルビー(比重4.00)はエメラルド(比重2.71)よりも重いという事になります。

劈開(へきかい)と断口
宝石は壊れるとき、一定の方向性を示して割れる場合(劈開)と破断(断口)があります。どちらの壊れ方を示すかは、結晶内部の原子の配列によって異なります。劈開を示す場合は、原子の結合力の弱い面(劈開面)に沿って割れます。劈開面は、結晶面に対し水平、直角、あるいは斜方面になります。また、宝石が1つ以上の方向に劈開する事もあります。劈開は、その程度によって完全(ほとんど完全に滑らかな面になる)、明瞭、不明瞭に分けられる。劈開の完全なものは、ダイアモンド、ほたる石、スポデューメン(シリア輝石)、トパーズ、方解石などがあります。
また、壊れた時に表面が欠けたようになる場合は、断口といい、原子の内部配列とは関連性はありません。断口面は通常、不平坦で、そのタイプによって、それぞれの名称がつけられています。

劈開:完全
バライトは劈開が容易で、3方向の劈開があり、劈開面が滑らかです。

劈開:明瞭
アルバイトの劈開面は完全に滑らかではないが、はっきりとしています。

劈開:不明瞭
アクアマリンの劈開は、あまりはっきりしていません。

不平坦な断口
デュモルチェライトのように細粒状、あるいは塊状の宝石の断口面はざらざらしています。

貝殻状断口
宝石にもっともよく見られるタイプの断口です。この名称は断口面が貝殻に似ている事からいわれます。

針状断口
この標本のように、表面が不規則でとがっているような状態の事をいいます。

参差(しんさ)状断口
交差しているような組織の鉱物に見られます。
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結晶の形
ほとんどの宝石鉱物は結晶質で、原子が規則的かつ対照的に並んで格子をつくっています。しかし、宝石の中には非結晶質(非晶質)のものもあり、それらは結晶構造を全く持たないか、弱い構造しか持っていません。結晶質の鉱物には、単結晶のものと、多数の結晶が固まって一群をつくっているものがあります。多結晶質の鉱物は、たいてい小さな結晶からできています。潜晶質の鉱物では、顕微鏡を使わなければ見えないほどの小さな結晶でできています。
鉱物の結晶は結晶面と呼ばれる数個の平面で囲まれた形をとります。この面の方向によって、晶癖と呼ばれる全体の結晶面の形が決まります。鉱物によっては錐体(すいたい)とか柱状といった1種類の特徴的な晶癖しか示さないものもありますが、幾つかの違った晶癖を示すものもあります。塊状の結晶とは、一定の決まった晶癖を示さない結晶のことを指します。黒曜石やテクタイトのような非晶質の宝石は、決まった形状はしていません。

双晶
天然の結晶で完全なものは希ですが、結晶の成長は温度、圧力、空間、環境などの外的要因に影響されます。そのような不規則性の一つが、結晶の内部構造が反復した状態であらわれる双晶と呼ばれる現象があります。双晶は複数の方向に同時に成長したものです。

非晶質
冷却速度が遅い為、結晶が形成されずにできたとされます。

錐状
先が錐状の特徴的な結晶です。

針状
この水晶中のルチルの結晶は針状の晶癖をもっています。

柱状
この結晶のように、6つの柱面と平らな端面で囲まれた形は柱状結晶の1つのタイプにすぎません。

塊状
塊状結晶には、明瞭な晶癖は見られません。

樹枝状
樹枝状の晶癖がみられます。

結晶系
結晶は、その結晶面の示す、最大限の対称性を基に7つの結晶系に分類されています。対称性とは、結晶の対称軸、すなわちその軸を中心に結晶を回転させた時、同じ形に見えるような、仮想の軸に基づいたことをいいます。360°回転するうち何回同じ形を示すかによって、その軸を2回軸〜6回軸と定義されます。

等軸晶系
等軸晶系(立方晶系)の結晶は対称性がもっとも強く、立方体、八面体、五角十二面体などの形をとります。最低4本の3回回転軸があります。

六方晶系/三方晶系
これらは同じ対称性を2に分けて考えたもので、六方晶系は6回軸、三方晶系は3回軸です。(この2つの晶系を同一とする考えもあります。

正方晶系
1本の4回軸で定義されます。代表的な結晶形は4面から成る柱面と両端が錐状か、偏方多面体、あるいは8面体です。

単斜晶系
単斜晶系は2回軸を1本という最低限の対称性しかもっていません。底部が卓面となる柱状結晶が多いです。

斜方晶系
最低限の対称性は3本の2回軸です。典型的な結晶の形は斜方柱状か、底卓面をともなった錐状、及び斜方両錐状です。

三方晶系
三斜晶系の結晶は対称軸をもちません。これに属する宝石は対称性が最も低いです。
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光学的性質
宝石の色は、目に見える一番わかりやすい特徴です。しかし、実際には色はさまざまな光学的性質にすぎません。宝石の個々の結晶構造の違いが独特な形と光とが相互作用して、それぞれの宝石種に特有な光学的性質が決まってきます。

色の原因
宝石の色は、主に光の吸収によって決まります。白色光はスペクトル(虹の七色)で構成され、光が宝石を通過すると、スペクトルの一部が選択的に吸収されます。吸収されなかった光線は通過、あるいは反射し、その宝石の色となって見えるわけです。宝石には、それぞれの指紋のような色彩の特徴(吸収スペクトル)をもっていますが、それは分光器を使わないと見ることができません。肉眼では多くの宝石が同じような色に見えますが、分光器で見ると明らかに違ってみえるのです。

他色の宝石
他色とは、宝石の化学組織の内、主成分ではない微量成分や不純物に起因した色のことをいいます。例えば、純粋なコランダムは無色ですが、不純物(多くの場合は金属の酸化物)を含むと色が着き、赤の場合はルビー、青、緑、黄色はサファイア、オレンジ=ピンクはパパラッチャと呼ばれます。このように他色の宝石は色相の変化が大きく、色がきれいに出やすい特徴をもちます。

自色の宝石
自色の宝石は色の化学組織中に含まれる主成分元素によるものです。自色の宝石は普通1色で、色相の変化も少ないです。例えば、ぺリドート(かんらん石)は常に緑色です。これは、その主成分の鉄によるものです。

パーティーカラーの宝石
1つの結晶の中で色が部分によって違うものをパーティーカラーといいます。色の数は2色(バイカラー)、3色(トリプルカラー)、またはそれ以上のものもあります。それぞれの色の分布は不規則であったり、成長に応じて層状になったりしています。パーティーカラーの一番良い例としてはトルマリンがあります。これは変種(バラエティ)が多い宝石ですが、1つの結晶中に含まれる色調の変化は15色になる事もあります。

多色性を示す宝石
宝石をある方向から見た時の色と、別の方向から見た時の色が違っている現象を多色性といいます。非結晶質や等軸晶系の鉱物は2色(二色性)、斜方晶系、単斜晶系の鉱物は3色(三色性)を示します。

屈折率(RI)
研磨した宝石の光を当てると、一部は反射するが、大部分は通過します。鉱物は空気と光学的密度が違うので、光はもとの進行方向とは違う方向に速度が小さくなって進む(屈折)性質があります。その屈折の程度を示す値を屈折率(RI)と呼びます。また、複屈折量(DR)も、宝石を鑑定するのに用いられます。

複屈折量(DR)
スピネルのような等軸晶系の結晶は単屈折性で、屈折計で見ると、シャドーエッジは1本ですが、トルマリンのような複屈折性の鉱物では、透過光線は2つに分かれ、シャドーエッジは2本になります。この2本の測定値の差が複屈折量(DR)です。

光沢
光沢とは宝石の石全体を見た時、石の表面での光の反射のしかたをを表す言葉です。したがって、表面の研磨状態に左右され、また、硬度が大きいほど輝きは強くなります。宝石学で使われる光沢の種類や強さを表す用語には次のようなものがあります。燦光(さんこう)は石が鏡面のように光を反射する場合に使います。反射の程度が小さい時には、土状光沢とか無光沢という表現が使われます。ダイヤモンドに匹敵するような光沢は、金剛光沢と呼びます。カットした透明宝石のほとんどは、ガラス光沢を示します。貴金属類は金属光沢を示します。また、有機質の宝石の光沢はさまざまで、樹脂状光沢、真珠光沢、蝋光沢があります。宝石の中には、変種によって光沢が違うものがあります。例えば、ガーネットは、樹脂状光沢のヘソナイトから金剛光沢のデマントイドまで変化に富んでいます。また、ラズーライト(天藍石)やハウライトは原石のままだと無光沢から土状光沢しか示しませんが、研磨するとガラス状光沢を示すようになります。

干渉
干渉とは、宝石の内部構造により光が反射して返ってくることで起こる現象です。結晶内部の反射で遊色効果が起こります。スペクトルの色全部が現われるものもありますが、1色がきわだっているものが多いです。オパールの干渉は、石の内部で微細球が規則的な三次元配列をなしている石自体の構造が原因で現われます。規則正しい球状粒子の配列による光の回折現象も原因となります。虹のような色彩を見せるこの効果はイリデッセンスと呼ばれます。イリデッセンスは、赤鉄鉱、ラブラドライト(曹灰長石)、アイリスクォーツなど多くの鉱物に見られます。ムーンストーン(月長石)では、結晶内部の層(薄層:異なったタイプの長石の互層)の境界面で光が干渉して、あたかも石の表面下できらきら光がゆらめくような効果を生み出し、アデュラッセンス、オパーレッセンス、シーラー(シーン)などと呼ばれています。

キャッツアイとスター
宝石をカボッションカット(丘状に研磨)した場合、結晶内部の空隙や、繊維状、針状インクルージョンの存在によって光が反射した時、キャッツアイ(シャトヤンシー)効果、スター(アステリズム)効果が現われます。繊維状組織の方向が1つの場合はキャッツアイ、2方向の場合は4条のスター、3方向の場合は6条のスターの効果が現われます。
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天然のインクルージョン(含有物)
インクルージョンは宝石内部に見られる特徴です。結晶が成長する間に結晶中に取り込んだ固体、液体、気体や、成長が終わったあとでできた劈開面や割れ目、断口面などの空隙を埋めてできます。インクルージョンは、かつては宝石の傷とみなされていましたが、今日では石に面白味が加わった、と考えられるようになりました。宝石の種類によっては特有のインクルージョンがあり、産地に特有のインクルージョンもあるので、宝石を同定するうえで限りなく価値のある存在ともいえます。

インクルージョンのでき方
固体インクルージョンは普通はホストの宝石より先にできており、ホストの宝石の結晶はそれを取り込んで成長します。はっきりした結晶の場合もあるし、非結晶塊状の事もあります。ホストと同時にできたインクルージョンは、ホスト結晶の原子配列に沿ってできています。例えば、ルビーやサファイアのスター効果は、母結晶であるコランダムの結晶が成長した時、その骨組みの中に溶け込んでいたチタンが、温度が下がるにつれて、ホストのコランダムの原子配列に支配され、一定の方向に並んだルチルの針状の結晶として、固体の中で成長したと考えられています。ホストの結晶が成長した後、その空隙や割れ目を充填してできたインクルージョンには、羽毛、昆虫の羽、指紋によく似た形のものがあります。
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ファセット
宝石の形を作る方法で最も一般的なのは、宝石の表面をファセットと呼ばれるたくさんの平面で区分してカットする方法です。これで石の完成した形ができます。これをカットといいます。工芸家や宝石研磨師は、宝石の色やクラリティー、重量などを判断して、その石が一番よく見えるように考えてカットします。しかし、重量、すなわち宝石の価値をあまり損なわないように妥協しなければならない事もあります。

ファセットの方法
宝石のカットは数段階に分けて行われ、その都度、それぞれの専門家の手にかかります。ダイヤモンドの結晶の原石を、ブリリアントカットする場合の例ですが、ブリリアントカットは、ダイヤモンドのカットの形としては最もポピュラーで、石の持つ強い光の分散を最大限に引き出す形です。しかし、石はひとつひとつ形が違うし、不完全な部分があったりします。また、重量を減じない事が一番重要なので、理想的な形にカット(メーク)するのは、なかなか難しい作業です。それでもやはり、ダイヤモンドの輝きやファイアと呼ばれる光彩を示すスパークリングを引き出すのが最大のねらいです。この目的の為に、ファセットのサイズ、数、角度は光学的に算出されています。原石の結晶はまず、鋸引や劈開により基本的な大きさに分割します。次に旋盤上で別のダイヤモンドをあてて回しながら丸みをつけていきます。その後、順を追ってファセットをカットし、ポリッシュ(仕上げ研磨)します。最終的な研磨を経て、台座にセッティングさてます。

1 原石
まず、原石のダイヤモンド結晶をファセットカット用に選別します。

切断
トップをカットし、旋盤上で別のダイヤモンドをあてて回しながら丸みをつけていきます。

研磨
中央のファセット(平坦なテーブルファセット)を最初に研磨し、次にベーゼルファセットを研磨します。

頂部、座部の研磨
最も多くのファセットを、グループごとに順番をつけていきます。クラウン部にスターファセットとガードルファセット、次にパビリオン部にローワ―ガードルファセットとキューレットをつけます。

フィニッシュ
最後にガードル上部に24個、下部に16個のファセット(ブリリアンティア)をつけていきます

セッティング
貴金属の台座に石を留めます。

ブリリアントカット
ブリリアントカットは、ダイヤモンドをはじめとする、透明な石のカットとしては最もポピュラーなカットです。このカットは、石の表面からの光の反射が最大になる形で、輝きやファイアがよく現われます。円形以外には、オーバル(楕円)ペンデローク(つゆ型)、ボート型のマーキス(先細長卵型)があります。

ステップカット
ステップカット(またはトラップカット)は、色石によく使われるカットの形で、長方形や正方形のテーブル面と、それに平行に連なる長方形のファセットとガードルからなります。石の角が欠けやすい場合は、エメラルドでよく見られるように、その部分を削って八角形にします。

ミックスカット
ミックスカットは通常、外形は丸く、クラウン部(ガードルより上部)はブリリアントカットに、パビリオン部(ガードルより下部)はステップカットにします。サファイアやルビーなど、透明な色石によく使われます。

ファンシーカット
これには、三角形、菱形、五角形、六角形などのさまざまな形があります。ファンシーカットは希少宝石をカットする時か、傷のある石や不規則な形の宝石に使われます。
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研磨・彫刻・彫り込み(エングレーブ)
研磨・彫刻・彫り込み(エングレーブ)が施されるのは、貴金属類や宝石(通常は塊状の微晶質や有機質の石)です。研磨は一番古い加工方法です。彫刻は大きな素材をカットする事により、立体的な作品に仕上げます。彫り込みは線や孔を刻んで形を作るか、彫り残した部分でイメージが浮き上がるようにします。彫刻や彫り込みをする場合は、その素材よりも固い道具が必要となります。

研磨
石の表面のつやは研磨、つまりグリット(荒砥)や研磨粉を使うか、他の石と摩擦する事によって出てきます。色の濃い宝石や、オパールやトルコ石などの半透明から不透明の宝石は、ファセットカットするよりも研磨のみの方が多いです。有機質の宝石も同様で、これらは、ビーズや象眼用に平板片にしたり、表面がなめらかで丸く、平らな底面に頂部をドーム状に入念に研磨したカボッション型にします。

彫刻(カービング)
大きな塊から装飾用の作品をカットする事を彫刻(カービング)といいます。古代エジプト、バビロニア、中国では、モース硬度7以上の硬い石が彫刻されています。インドでは純度の低いコランダム(エメリー)が彫刻や彫り込みに利用されていました。今日では、彫刻用のノミやろくろが使われます。彫刻によく使用される石に、サーペンティン(蛇紋石)、ブルージョン(ほたる石)、マラカイト(孔雀石)、アズーライト(藍銅鉱)、ロードナイト(ばら輝石)、ロードクロサイト(菱マンガン鉱)があります。

彫り込み(エングレービング)
これは宝石の表面に、彫刻刀(グレーバー)やチュリンなどの鋭利な工具を使って線や孔、溝を彫り、模様をつける事をいいます。代表的なものにカメオ、インタリオがあります。カメオは平らな浮き彫り細工のデザイン(人物像が多い)で、背景はカットして取り除いてあります。インタリオでは、カットして取り除くのは、背景ではなく主題で、粘土や蝋で封印する時に使う凹型の像が彫り込まれています。古代ギリシアやローマでよく用いられたもので、収集家の間では今でも価値が高い。彫り込み彫刻した宝石はヨーロッパではルネッサンス期に流行し、英国のエリザベス朝時代には、貴族の間でカメオの肖像が送り物に使われました。昔から特にカメオやインタリオにはオニキス(縞めのう)、サードニクス(紅縞めのう)などの層構造をもった石が使われています。そのほかには水晶、アメシスト、シトリン、ベリル、ペリドット(かんらん石)、ガーネット、ラピスラズリ、赤鉄鉱、それに有機質の象牙やジェットが用いられます。
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合成宝石
合成宝石は岩石中でできたものではなく、研究室や工場で人為的に作られたものです。実質的には天然の宝石と同じ化学組成と結晶構造を持っているので、光学的性質も物理的性質も酷以しています。しかし、普通はインクルージョンの違いで鑑別できます。多くの宝石が研究室で合成されていますが、商業的に生産をされているのはそのうちの少数で、一般には工業用や科学的目的で作られています。

合成方法
人類は何千年も前から宝石を複製しようとしてきましたが、1800年代になるまで何ら成果がありませんでしたが、1877年、フランスの科学者エドモンド・フレミーが、はじめて、ある程度の大きさの宝石質の結晶の合成に成功しました。その後、1900年頃にオーギュスト・ベルヌイがルビーの製造技術を開発しました。ベルヌイの火炎溶融法はいくつかの改良を加え、今日でも使われています。この方法は、粉末状の原料を炉内に投下し、2000℃以上の火炎を通過中に溶融、液滴にする方法です。液滴は台座上に落下し結晶化し、台座の下降にしたがって、結晶は長い円筒状のプールと呼ばれる形に成長します。

フラックス溶融法
フランスの科学者エドモンド・フレミーが開発したフラックス溶融法は、今でもエメラルドの合成に使われています。粉末の原料をるつぼの溶剤(フラックス)の中で溶融し、溶かし込みます。その後、何ヶ月もの間高温に保たれた後、ゆっくりと冷却して作られます。

エドモンド・フレミー
フランスの科学者エドモンド・フレミーは、最初は、ある程度の大きさのエメラルドの結晶を合成し、その後、酸化アルミニウムとクロムをるつぼの中で溶融し合成ルビーを作りました。

形と色
合成宝石は製造法により、色や形に微妙な差が生じじる為、天然宝石と区別する事ができます。例えば、火炎溶融法による合成コランダムは、結晶と液体の境界面の形が曲線的である為、カーブした成長線が現われます。また、合成宝石によっては色の分布が不均一になる事があります。火炎溶融法で合成したスピネルは、ルビー、サファイア、アクアマリン、ブルージルコン、トルマリン、ペリドット、クリソベリルなどのイミテーションに用いられます。

合成宝石に特徴的なインクルージョン
合成宝石には天然宝石とは違うインクルージョンが含まれるので、ルーペや顕微鏡で観察して、鑑別するのが最も有効な方法です。合成宝石のインクルージョンは成長過程や合成石の種類を特徴的に表われます。例えば、ベルヌイ法によるルビーには輪郭のはっきりした気泡がよく見られ、フラックス溶融法のエメラルドには特有のベールや羽毛模様のインクルージョンが見る事ができます。
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イミテーションとエンハンスメント
イミテーションは、天然宝石とは見かけは同じですが、物理的性質は異なります。人を欺く為に作られたものです。ガラスや合成スピネルなど人工材料が、いろいろな宝石のイミテーションに使われてきました。一方、天然産の鉱物も、より高価な宝石に似せて加工されます。本物の宝石のひび割れや傷を隠したり、熱処理や照射で色を変えたりした、品質を向上(エンハンス)する事も可能です。

ガラスのイミテーション
ガラスは何世紀も前から宝石のイミテーションに使われてきました。ガラス光沢の宝石に似せて、透明、不透明を問わず、またどんな色も作る事ができるからです。しかし、通常は感触が温かい事や、硬度が低い為にできる擦り傷などで判別できます。ファセット面の欠け跡や内部の渦巻き模様や気泡もよく見られます。さらに多くの宝石と異なるのは、ガラスは単屈折であるという特徴があり、そこからも判別する事ができます。

オパールのイミテーション
宝石学者は、オパールの色のきらめきを遊色、あるいはイリデッセンスと呼んでいます。これは、構成物質であるシリカゲルの微細球からの光の干渉と屈折によって生じます。この構造はフランスのギルソン社のオパールに模倣されて大いに効果を上げていますが、色の模様がモザイク状である点が異なっています。オパールのイミテーションには、この他にポリスチレンのラテックス製のものや、複数の石を一つに接着したものなどがあります。オパールのダブレットは、頂部が天然の価値の高いオパールで、底部はコモン(ポッチ)オパール、ガラス、又はめのうで構成されています。さらに頂部を保護する為にドーム型の水晶を貼り付けたものがトリプレット(三重)です。

スローカムストーン
アメリカ人のジョン・スローカムは、遊色効果のあるイミテーションオパールを作りましたが、その石はなめらかさに欠け、天然のものにあるモザイク模様も無く、拡大してみると組織がねじれています。

ガーネット・トップ・ダブレット
複数の石で構成される組み合わせ石で一番よく知られているのはガーネット・トップ・ダブレット(GTD)です。これは天然ガーネットの薄片を色ガラスの台に接着したもので、色がはっきり見える効果があります。2層の接着部が明瞭なので、簡単に偽物と分かります。

ダイヤモンドのイミテーション
たくさんの天然石がダイヤモンドのイミテーションに使われてきました。中でもジルコンは最も説得力もあり、合成石のイミテーションでは一般的ですが、欠陥があり鑑別には熱伝導性の検査をすると分かります。

熱処理
熱処理を行うと、色がエンハンス、又は変化し、石によっては透明度を増します。処理法は、石を火の中に入れて料理するやり方から、精密な装置の利用までとさまざまあります。その結果が確実に現われる石(アクアマリンの色は緑から青に変化)もありますが、それほどの効果が現われない石もあります。

照射
宝石は、放射線を浴びるとその色が変わります。放射線は地殻の放射性元素や人工的な発生源から出ます。自然界の放射線では宝石の色を変えるのに何万年もかかりますが、人工的な照射ではわずか数時間の照射ですみます。時間が経つと色がもとの戻ったり、色が薄くなったりする場合があります。熱処理によって色を元に戻したり、少し変化させる事もあります。

着色
着色剤や染色剤などの化学薬品は、宝石の表面だけにコートしたり石全体の色を変化させたりして、宝石の見かけを変える事ができます。染色する際は、多孔質で、ひび割れや傷が多い方が染み込みやすく、効果的です。例えば、多孔質のハウライトを染色してトルコ石のイミテーションにします。

油浸処理
宝石の色をエンハンスしたり、ひびや傷を埋めるのに油を使う事があります。エメラルドの場合は、もとからひび割れや傷を修復する為に油処理してあるのが普通です。
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誕生石とは
石の持つ不思議なパワーが魔除けになると信じられ、その月の宝石を身につけることで幸運が訪れるとされていました。時が経ち宝石は高価なものになってしまい、12ヶ月分をすべて手に入れることができなくなってきたので、自分の生まれた月の宝石を身につけるようになりました。これが誕生石といわれるものです。
国によって誕生石には多少の違いがありますが、幸運が訪れると信じられているようです。

日本
1月 ガーネット 貞操、友愛、忠実
2月 アメシスト 理想、権威、誠意の象徴
3月 珊瑚 / アクアマリン 幸福、長寿、聡明、知恵
4月 ダイヤモンド 潔、永遠純の絆
5月 エメラルド / 翡翠 高貴、健康、徳
6月 真珠 富、健康
7月 ルビー 情熱、自由
8月 めのう 博愛(赤縞めのう)
9月 サファイア 誠実、賢明
10月 オパール / トルマリン 希望、幸福、すべてを満たす豊かな愛
11月 トパーズ 友情、忠実
12月 トルコ石 / ラピスラズリ 成功、繁栄、健康、愛和
1956年に全国宝石組合が決定したものが定着しています。

アメリカ
1月 ガーネット 貞操、友愛、忠実
2月 アメシスト 理想、権威、誠意の象徴
3月 ブラッドストーン 献身、勇敢
4月 ダイヤモンド 純潔、永遠の絆、不屈
5月 エメラルド 幸福、清廉、夫婦愛
6月 真珠 / ムーンストーン 富、健康、恋の予感、満ち足りてゆく愛
7月 ルビー 情熱、自由
8月 赤縞めのう / ペリドット 博愛、友愛、夫婦の和合
9月 サファイア 誠実、賢明
10月 オパール / トルマリン 希望、幸福、すべてを満たす豊かな愛
11月 トパーズ 友情、忠実
12月 トルコ石 成功、命中
1912年にアメリカ宝石組合が発表されたものが基準になっています。

フランス
1月 ガーネット 忍耐
2月 アメシスト 真実
3月 ルビー 勇気
4月 サファイア / ダイヤモンド 後悔、純真
5月 エメラルド 幸福
6月 白めのう 長寿、健康
7月 紅めのう 心の満足
8月 赤縞めのう 博愛
9月 ペリドット 転換
10月 アクアマリン / 真珠 不幸、希望
11月 トパーズ 繁栄
12月 トルコ石 / マラカイト 親愛の兆し、計画の実現
10月は吉と凶が相殺されています。
ルイズ・タルク女氏が制定したものが基準になっています。


イギリス
1月 ガーネット 貞操、友愛、忠実
2月 アメシスト 真実
3月 アクアマリン / ブラックストーン 理想、権威、誠意の象徴
4月 ダイヤモンド / 水晶 純潔、永遠の絆、予感、清浄
5月 エメラルド 幸福、清廉、夫婦愛
6月 真珠 / ムーンストーン 富、健康、恋の予感、
7月 ルビー 情熱、自由
8月 ペリドット / 赤縞めのう 友愛、夫婦の和合、博愛
9月 サファイア / ラピスラズリ 誠実、賢明、健康、愛和
10月 オパール 希望、幸福
11月 トパーズ 友情、忠実
12月 トルコ石 清勳、繁栄
1937年に、イギリス貴金属組合が発表されたものが基準になっています。
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